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ケロの毎日

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皆川 博子 『死の泉』 

内容(「BOOK」データベースより)
第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作。


↓ネタバレあり↓
旅のお供に。
ドイツ周辺を旅しながら読みたい本。
収容所に行ったり、岩塩坑に行ったり、オペラに行ったりしながらね。

数年ぶりの再読だが、とても印象に残る本だったので、だいたいの登場人物は覚えていた。
なので、今回はじっくりと腰をすえて、この物語の持つたっぷりと毒を含んだ美しさを堪能することができた。

戦争中は日本でも「産めよ増やせよ」と言われたらしいが、夫の子でなくても正しいアーリア人をたくさん産むことがドイツでは奨励されたということを、この本を読んで知った。
それだけでなく、ポーランド人(他の国のこともあっただろうけど)でありながら、金髪と青い目の美しい容姿を持つために攫われ、ドイツの孤児院に連れてこられた子供たちがいたことも。

人体実験によって性的に成熟させられ、後に後遺症を残すことになる美しい少女レナ。
ボーイソプラノを保つためにカストラート(去勢)させられたエーリヒ。
エーリヒにひどいことをしたクラウスに強い恨みを持ちながらも、顕微鏡をくれたクラウスの思い出を大切に忘れられなかったフランツ。
エーリヒの身代わりにされたミヒャエル。
クラウスがブリギッテに産ませた、体ばかり大きくて怖がりのゲルト。
ゲルトに同性愛的な感情と兄弟的な感情の両方を抱き、ゲルトを守るために死んだ、極右のヘルムート。
なんてかわいそうで美しい子供たち…。

我が血は 汝が血
汝が血は 我が血

かあさん、かあさん、おなかがすいた
パンをちょうだい、飢え死にしそう
待っておいでよ、かわいい坊や
明日、麦を刈るよ
麦は刈り終えたけれど
子供は泣いていた

エーリヒとフランツ、そしてミヒャエルが歌う歌を、聴きたい。
この小説に出てくる曲が全部収録されたCDとか、無いものだろうか。
もちろん、歌声は美しいボーイソプラノで。

ネット上で、恐ろしいまでに美に執着するクラウスに共感する感想を読み、なるほどそういう感じ方もあるのねと目からうろこ。
偏執的なクラウスは私にはただ恐怖の対象でしかなかったが、そう言われてみれば、人とは違った感性や価値観を持つ私は、クラウスに近いものを持っているのかもしれない。
誰よりも美しいものを愛しているのに、自分が美しくないというのは、悲しいことであるはずなのだし。

こんなに大好きな小説、だけど、私が好きな登場人物は、誰なんだろう。
10歳にして男らしく頼りになった、フランツかな。
でも、美人ではあるけれど素朴な田舎娘のようだったのに、精神に異常をきたしてから神がかり的な美しさを得たマルガレーテも、魅力的だ。

前回読んだ時も今回読んでからもラストが非常に謎だったんだけど、他の方の感想をネットで読んだりして、自分なりに結論が出た。
マルガレーテの隣で揺れていた細く弱々しい足は、きっと誰か知らない子供のものなんだろう。
マルガレーテの美しさを保つために、クラウスが繋げた誰かに違いない。
そしてクラウスは、その子が駄目になったら、また別の子を繋げる。それを繰り返すんだろう。
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カテゴリ: 本・マンガ(ネタバレ有)

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